*妥協

つい先日、わが愚息呈后(てんご)様が いつものように公園の砂場を荒らして居たんですが、その日は天気もよく、今年初めての公園になる親子が結構いらっしゃいまして。
 まあ、呈后様にとっては あまり同年代のお子さん達は興味の対象に無いわけで。 動きとか力とかが違いすぎるから、少し物足りないみたい。 普段はちょっと一緒に遊ぶともう充分なくらい。 

 砂場でひとり荒れ狂う呈后様に、勇気を振り絞ってのことか、または無関心なのか 顔見知りのお子さん(ゆう君)がにじり寄ってきて。 私としては「ああ、危ない!うちの子から離れたほうがいいよぉ。」とその子の事を心配。 まるで狂牛病のように、左旋回ばかりしている呈后様に多少の注意を促すが、よだれを垂れ流しながらの呈后様には届きません。
 ふと、ゆう君が 呈后様(旋回中)の手から、タイミングよくおもちゃを奪い取ってしまって・・・。

案の定、呈后様は烈火のごとく怒り心頭。狂乱です。恐いです。なんだか聴きようによってはどこぞの怪しげな呪文を叫んでいる・・・。
でも、ゆうくんはマイペースな子。怒らせた張本人が呈后を見て笑っている。 いや、君がおもちゃを奪ってしまったんだよ・・・。


 30秒後、いきなり呈后様の叫びが止まり、彼の口から出た言葉は、
「まあ、いいけど。」


これにはビックリ。まぁいいけどって・・・。しかもかなり鮮明な発音。それ以外には聞き取りようがない。

周りのママさん達にも聴こえたようで、一瞬 親たちが顔を見合わせた後、一同大笑い。およそ二歳児の言葉とは思えないから。 
「すごいね、てんちゃん。」とか
「どこで覚えたの?」とか ママさん達からお褒めの言葉連発。 多少呈后様もとまどっていたけど、自分の発言でみんなが笑ってくれたことが本人も嬉しかったみたいではある。にやりとしているからだ。


でも、なぜその言葉が出たのか。誰が教えたのか。 しばし考えた後、やはり私の真似を彼はしたらしい。
普段から屋内外問わずに暴れている呈后様には、静かにするというマナーはまだ高度だ。今日だって、本棚の上にある「Mr.インクレディブル」のマスコットを掴んで、股間を指差しながら私の目の前に持ってきて、「パパ、ちんこ!ちんこぉ!!」と満面の笑みで伝えてくる彼。 彼には「静か」という言葉はふさわしくない・・・・。まだ、無理だ。
そんな呈后様に、私は妥協を強いられている。まぁ、そんなもんだろ。みたいな。
それ故、いつもの注意には語尾に「まぁいいけど。」とつける場合が多いのだ。あまり使いたくはないが、ほぼ無意識のうちに出てしまう。呈后様効果、であろう。
やはり子供は 普段から良く使う言葉から覚えていく。その結果がこれだ。
彼のチョイスのセンスはどうかとも思うが、みんなが楽しくその場を過ごせたんだから、まぁいいだろう。